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第6章 書店から見たあのベストセラー
最近のケータイは何と申しますか高機能化はとどまる事を知らずに進む一方でございまして。カメラ機能なんぞは付いていて当たり前。しかもそのスペックたるや、100万画素! などという驚愕の、まさに本家デジカメ商売あがったり、というレベルにまで進化して来ております。いや、商売あがったりはデジカメ市場のみならず、書店もでございまして。 さて、前置きが長くなってしまいましたが、本題はカメラ機能ではなく、このおかげですっかり陰が薄くなってしまった、というかすっかり市民権を得て、もはや水か空気のような存在となってしまった「着メロ」、そして着メロ本周辺の書店事情というのがこの節のテーマでございます。 一体全体何年前くらいかは忘れてしまいましたが、まだケータイの着信音が無機質な「ピロピロ音」が主流だった頃、NTTドコモから発売となった「206シリーズ」というのがございました。これが画期的なことにデフォルトで用意されている着信メロディの他に、自分でオリジナルのメロディを入力・作成できるという機能が付いておりました。とはいっても味気ない電子音しかも単音でワンフレーズ程度しか入力出来ませんでしが。だがしかし、自分で好きなJ−POPのサビ部分を耳コピして、そこから譜起しして……などという芸当が出来るお方なぞそうそういる筈もなく……。世間の皆様はこの画期的機能をもてあましておりました。 そこに目を付けたのが双葉社。記念すべき? 着メロ本第一号『ケータイ着メロドレミブック』が発売となりました。 さらに今度は問い合わせの波が続々と。しかし、今現在こそ「着メロ本」という呼称は市民権を獲得し、このヒトコトで通じるものの、この立ち上がり段階と来たら、お客様もなんと問い合わせしたらよいものかさっぱり要領を得ず、 そんなこんなで「着メロ本」は平積みするも即日完売。すぐに重版がかかりまして追加分が入荷となりましたが、入荷しては即完売、入荷しては即完売の繰り返しをしているウチに、お客様にも「着メロ本」という呼称はだいぶ浸透いたしまして、やっと日々の業務もスムーズに行えるようになってまいりました。 で、ベストセラーとなりますとお約束のごとくに便乗本が続々と出てまいります。もちろん本家も第2弾、第3弾と、続編を続々と発売。増える増える着メロ本。そして売れる売れる着メロ本。まあ、その売れるコト自体は大変結構、むしろよろこぶべきなのではございますが、ここから新たな悩みの種がふたつほど……。 まず、ひとつめは置き場所確保をどうするか? つうもんでございます。なにぶん新顔でございますので、ここまで増殖された日には一体全体どうしたらよいものかしらん? などとワタクシ頭を抱えました。で、結局とどまることを知らないネズミ算的増殖着メロ本のために専用の平台を用意するハメに……。 ふたつめ。着メロ本の購入者の裾野が広がるのと同時に増える増える しかし、それ以外にも、つうか最大の問題が発生。ふたつと書いておきながらみっつあるではないかというのはさて置き、何かと申しますと、そう、買わずにその場でガッという音がするくらいに本を開き、もう一方の手でポチポチポチポチ……。店内でタダ入力する輩が大量発生。注意すれども注意すれども一向に減る兆しはなく、業を煮やした私は店頭の着メロ本すべてにビニールを掛けてしまいました。 そんなタダ入力と書店員との、長い長いまるで応仁の乱のごとき戦いが続いていた着メロ本に変化が訪れました。何かと申しますと「ハモメロ」でございます。3重から4重へと和音着メロはエスカレートを続けるに伴い、イチイチポチポチと入力するのがしちめんどくさくなったお客様は、いわゆる「ダウンロード」という方向へと流れまして、段々と着メロ本はすたれていくのでございます。 はたして書店員に安息の日々は戻ってくるのでありましょうか??
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