応募結果発表

第9回 (締め切り/2002年12月1日)
総評
 ここ2・3回に較べると、今回、レベルの高い応募作が多かった。今までが平均40点だとすると、60点以上といったところ。とくに、構成や目次がきちんと練られているものが多かったことで、畢竟、多くの入賞作を選出することができた。
 一般的なテーマ(例えば旅もの)からかなりニッチなテーマまで、幅広かったのも今回の特徴であったが、希少さがあまり感じられなかったり、潜在読者があまりにも少なかったり、という理由で入賞には至らなかったものも数点あった。
 最後に、ここのところ、エッセイやノンフィクション小説(事実に基いた物語)の比率が上がってきているが、こういったジャンルこそ、”構成(展開)”をしっかり提示してもらう必要がある――つまりは判断不能なものが少なくない。 【田】

『教えることを仕事にしよう!』
ペンネーム 村井美月
寸 評  意外や意外に類書がない。しかも、タイトルが明瞭かつシンプルで分かりやすい。かつまた、ニーズのある分野であることはいうまでもない。これは、すぐにできて売れる要素も充分備えている実用書である。
 いま書店で売れるものは、不況の世の中を反映してか、その本を読むと自分にメリットのある実用書である。メリットとは、収入面、経済面、つまりお金である。時間を使うとか、余暇を過ごすとか、趣味に生きる、というテイストも2、3年前までは、それなりに書店での平積み率が長く、ロングセラー本も多かった。しかし今は、「手に職、手に金」の本が売れているのである。
 この企画書は目次の土台もしっかりしており、また著者の立場も明確であり筆力もあると見た。これならこんな本になる、というイメージがしやすく、企画はPASSしやすかった。
 ターゲットの部分であるが、何も女性オンリーに絞る必要もないだろう。男性でも、リストラ、サイドビジネスなどで講師を考えているニーズもあるかと思うので、対象は一般で良いはずだ。 【沢】
『一書く$迢焉I コピー公募[必勝]バイブル』
ペンネーム コピー楽勝委員会
寸 評  はっきり言う、「企画書そのものは十分”通過”に値する」。とくに目次が具体的かつ詳しいのがよかった。企画書だけでなく主宰サイトからも、コピーライターとしての実力が伺える。私自身もタイトルやキャッチコピーを考えるのは好きなほうだが(駄洒落も)、コツさえ掴めれば、コピーライティングに挑戦する人(読者)は多いのではないかと思えてくる。但し、いきなり単行本にまでもっていけるかどうか……。そういった意味で”もうひといき”にさせてもらった面はある。いずれにしても、今回の応募を最後に次のステップに進めたい。 【田】
『昨日までここにあった本ないんですけど……』
ペンネーム kacchi
寸 評  この企画書の構成を読めば、本好き・書店好きな人間なら、きっと読んでみたいと思うはず。ひと言でいうと、本屋の店頭で起こる日常を面白可笑しく、ドラマチックに書いてみようということである。このテーマは、方向性を間違うと、所謂”業界本”になってしまうのだが、けっして本屋の経営論や業界のマクロ分析に立ち入らず、あくまでも現場とお客さん(理論より現象)に焦点を当てている点に好感が持てる(要は、佐野眞一より永江朗ということ)。同一分野の最近の本では『劇場としての書店』(福嶋聡/2002年7月)が評判が良いが、十分差別化できる可能性を感じる。 【田】
『不惑おやじ道』
ペンネーム 松村すかたん
アドバイス  「40になったら、男は自分の顔に責任を持て」と言ったのはリンカーン。信用、実績、知性など、これまでの人生で培ってきたものが顔や風貌に出るのだろう。もてるか、もてないかの差が歴然としてくる時期なのかもしれない。そういう世代をターゲットにして、「もてる男になろう」というメッセージは広く受け入れられる可能性が高いと思う。しかし、松村さんも指摘しているとおり、岩城晃一などを例としてあげても、あまり参考にならない。やはり、市井でもてている人たちの事例をたくさん挙げて、その中から、自分にあった方法を選ばせるという方法が有効だと思う。そういう意味で、この企画に興味を持った。ただし、「青春よ、もう一度」という切り口については、テーマが散漫になるおそれがあるので与しない。 【池】
『ピンク! ピンク! ピンク!』
ペンネーム 久々利美子
アドバイス  まず第一に、ピンク女優にフォーカスを当てた書籍は少ない。そして、企画者が20代の女性である点もユニークだ。さらに、「学生時代、ピンク映画にハマリ」の部分を読んでみたいと思う。この3つのカウンターパンチが、見事に効いてしまう企画書であった。
「それは、本当なのだろうか?」と、思わず自分でツッコミを入れたくなるような部分もあるかも知れないが、そこは、スキマ企画をうまく見つけた企画者の腕であろう。確かに、ピンク映画がDVD化されたり、週刊誌などでもピンク女優が特集されたり、とニーズのある分野でもあるので、チャンスといえば、チャンスである。
 しかし、敢えて辛口コメントを言わせてもらえれば、タイトルの「ピンク!ピンク!ピンク!」は、本当に本を読んでいるのだろうか? とちょっと不安になる要素だったのは事実。まえがきやコラムのタイトルならまだしも、25歳とはいえ、書店々頭に置かれるイメージや、読者がお金を出して買うイメージを想像してもらいたい。
 なにぶん文章力を見ていないので、「?」な部分もあるにはあるが、気になる企画および企画者である。あとは、タイトルとサブタイトルを再検討してみよう。 【沢】
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