応募結果発表

第 6 回 (締め切り/2002年1月31日)
総評
 ISIZE BOOKのクローズ(12/25)に伴い、「5時から作家塾」のホームタウンが WebDavinciに移った。そのためかどうかは別として――多分そのせいだろう、年末までは応募数が伸びず、応募期間が長かった割には、通過作を選出できなかったのが残念である。事務局一同、気分を新たにして第7回に望みたい。
 今回【もうひといき】と【次点】に選出した3点については、いずれも応募者のプロフィールにたいへん惹かれるものがあった(著者としての可能性を感じた)。しかしながら、3点とも構成や目次がよく練られてはいるものの、商業出版という、謂わば売れることを目的とした出版において、その切り口やタイトル、読者数はどうなのか? という点が引っ掛かってしまった。3点とも惜しいところまでは来ていると思いつつも、「これなら多くの人に読んでもらえるのでは!」という、あと一味が欲しかった。再チャレンジに期待している。 【田】

『ふつうの障害者たち』
ペンネーム HK
寸 評  テーマ(企画意図)、構成(目次案)など、注目に値する。片や取材対象が多いことから、取材記事的なレポートになってしまい、作品として無味無臭になってしまわないだろうか? 作品として、いかに読者に感動を与えられるか、文章力が問われる。
「ふつう」という基準を文章で表現するのは難しい。また、内容として暗くなりがちにならないかどうかも課題(暗い話の連続だと、読者は途中の読むのがイヤになる)。障害者・健常者の双方に向けて、どんなメッセージを送りたいのか、この点がふらつく(曖昧になる)ようだと厳しくなってしまう。 【河】
『デンスケ劇場』
ペンネーム 唄欣愚(バイキング)
寸 評  デンスケ――デンマーク人の陽気でマイペースな生き方を「釣りバカ日誌」の浜ちゃんになぞらえた唄欣愚さん。今回の企画は、こうしたデンスケの生態をエッセイでまとめようというものだ。デンマーク大使館に長らく勤務してきた唄欣愚さんということもあり、デンマーク人に関するおもしろい話が聞けそうな気がしてくる。
 しかし、デンマークという国は、日本人の間では、あまりにも馴染みがなさ過ぎる。デンマークといわれて、私が思いつくのは、せいぜいアンデルセンくらい。デンマーク人の知人もなく、ヨーロッパの地図を見ても、どのあたりかがわかる程度。じっさい、多くの日本人にとって、デンマークという国に関する認識は、私と似たり寄ったりではなかろうか。
 だからといって、その知られざるデンマークに興味があるかといえば、そうでもなく、ワールドカップで優勝したり、ローリガン(デンマーク版フーリガン)が大事件でも起こさないかぎり、デンマークに(お金を払って、本を買うほどまでに)興味を持つ人は少ないと思われる。
 そういう意味で、ある一定数の読者を獲得して成り立つ”商業出版においては”、本企画の実現は極めて難しいと言わざるをえない。 【池】
『母子家庭の達人 100の鉄則』
ペンネーム 夏目結衣
寸 評  目のつけどころは面白く、時代性も話題性もある。アイデアだけでなく、読者対象も、「母子家庭予備軍の女性全般」という切り口もなかなか頷ける。また、「二代にわたる母子家庭経験者」という著者の立場も説得力がある。慰謝料や養育費のもらい方などは、経験者でなければわからない要素であるし、父子家庭や一般家庭でも、知識として食指が動く目次構成になっている。が、再構築してほしい要素もある。
 まず、タイトルである。「母子家庭の達人」では、読者から受けるイメージとして、固く暗い雰囲気があるのだ。暗くなりがちな内容だけに、「シングルマザーいきいき発見BOOK」とか、「素敵! 快適! シングルマザーライフのススメ」など、明るいテイストのタイトルを持ってきた方が読者ウケする。
 次に、読者ターゲットが、この企画の本を買って読むか? というハードルがある。シングルマザーは、仕事・家事・育児など、毎日の生活を分刻みに追われており、ハードワークである。妊婦向けの胎教絵本や雑誌が右肩上がりに売れ、逆に出産後の子育て本の動きが鈍いのは、忙しさ・時間との闘いという要因が背景にあるからだ。今回の企画は、どちらかといえば後者。より説得力を持たせるために、企画者1人のノウハウだけでなく、10人ほどのシングルマザーへのインタビュー内容も盛り込むという手もある。
 タイトルのインパクトと説得力とが味付けされれば、今の時代のニーズに充分対応できる企画である。 【沢】
番外作 『人』
ペンネーム みちやまごろう
アドバイス  ひとりひとりの情感を漢字一文字で表現し・・・というアイデアはたいへん面白い。ただ、それをそのまま一冊の本にして好んで読まれるかどうか・・・、ということになると厳しい――編集面で相当の工夫が必要だ。
 ならばいっそのこと、単純に文字だけの本にするよりは、「書」集にしてみるとか、カレンダーやダイヤリーと組み合わせてみる(7ジャンル×53人分を用意する)とか、そんな方向で考えてみてはどうだろうか? よりブラッシュアップされた企画に期待したい。 【田】
[5時から作家塾]トップページ